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私たちは出席率100%の合奏団を目指しました。これは唯ひたすら、バランスの良い楽器構成で実のある合奏を楽しみたいという悲願から来るものです。欠席者を有る程度予測して、多めに募集することも考えられますが安定性に欠くし、1人2人ぐらい欠席しても良いというムードは、私たちの意図に反するものでした。誰しもが喜んで出席して合奏したい、そのためには万難を排して参加するんだというムードが欲しかったのです。しかし現実は厳しく、ビオラは1人しかいずその上チェロ不足・・・。
そこへ思いがけず朗報です。
日響に貼らせていただいたポスターを見て、Vn氏が2人、そしてビオラ氏が1人参加したいという連絡です。Vn氏もビオラ氏も学生オケ出身のベテランです。私たちはそれこそ小躍りして喜びました。
所がこの3人の方、2・3回合奏に参加したんですがその内Vnの方1人とビオラ氏が来なくなりました。Vnの方が来なくなったのにはハッキリした訳がありましたが、ビオラの方がも一つはっきりしません。私は、ビオラ氏とコンタクトを取ってお話をお聞きすることにしました。
彼は、何だか言いにくそうでしたが、アルコールが回るにつれてポツリポツリ話してくれました。 その内容はショッキングなものでした。
一言で言えば、この合奏団では楽しめないということでした。 彼は、東京から転勤して間もない頃で、どこにどんな合奏団があるのか、調べて見ようと思っていた矢先、あのポスターが目に入ったそうです。しかし、この合奏団にはチェロがいないし、バイオリンもしっかり弾いている人が少なく、ビオラにとって非常に厳しい状態だと言うのです。
彼が学生オーケストラでビオラを選択したのは、その暖かい音色に魅せられてと云うこともあるが、それ以上にバイオリンとチェロバスに挟まれて弾く中間音の魅力にとりつかれたからだそうです。ハーモニーの充実はバイオリンとチェロバスだけでは得られず、そこにどうしてもビオラの声域が欲しいところです。特に4声部用に作られた曲では、自分の出すビオラの音によってたちまちハーモニーが充実し、ハーモニーの性格が決まることが肌で感じることが出きるそうです。
ビオラは、高音と低音をくっつけるいわば接着剤のようなものだと思います、と彼は続けました。この接着剤の善し悪しでハーモニーは充実したりしなかったりする、そこにビオラの面白味と責任がある。
所が、この役割もバイオリンやチェロがしっかり弾いてくれればの話で、バイオリンやチェロの音程が悪かったり、良く合わなかったりしたら、全くビオラの役割が発揮できず、どう弾いてもハーモニーの充実などおぼつかない。それでも、メロディが弾けるバイオリンはそれだけでも楽しいのかも知れないが、ビオラパートを弾くと云うことだけに楽しさを見いだすのは到底不可能である、合奏してこそのビオラなのだから・・。
非常に耳の痛い話でした。音程が悪い・・・、これは私も悩みの種でした。合奏していても、お互いの音が溶け合うことはなく、てんでばらばらのシバキ合いのような、ひどいものだったのです。
彼の嘆きは延々と続きました。そして結論は、こんなことならもっと他の合奏団を探したいということでした。
私は、非常に残念でしたが彼の気持ちは痛いほど分かるだけに、もうそれ以上何も言えませんでした。我々の合奏団の状態がもう少しましになったら、復帰も考えて頂きたいことをお願いするのがやっとでした。
なんということでしょう、私たちはバランスの良い楽器編成を目指していたのに、自らの実力のなさでその道を閉ざしていたのです。この話は早速メンバーに報告し、このままではせっかくビオラ・チェロの方に来ていただいても定着しないだろうということ、そしていつまで経っても楽器のバランスは得られないであろうということなどを話し合いました。メンバーのビオラ氏は「彼の気持ちよく分かる」と言っています。そしたら、もっと以前からそのような問題を提起してくれればいいのに・・・と
思いましたが、このような意見は中々出にくいものです。問題提起や提案ばかりして自分は動かないというのも考えものですが、自分の思ったことを自由にものが言える雰囲気作りも大変重要なことだと思いました。
とにかく、なんとかせねばなりません。とりあえず、以下のことを申し合わせました。
1.合奏日までに必ず練習してくること。
2.そのために、楽譜は最初の合奏日の1ヶ月前には手元に届くように準備する。3.楽譜には必ずボウイング及び指揮者の要求事項をあらかじめ記入しておく。
4.合奏前には全員で音階練習をする。
5.ソロは固定せず持ち回りとする。
一口に言いますが、これらのことを実現するのは大変です。また、団のカラーが明確になってきたことで、中には自分には合わないと感じる方も出てくるでしょう。私は密かに「これは自然淘汰されるのをじっと待つしかない。」と思っていました。10人10色の面々を、100%完全に満足させることの出来る団体を
最初から作るなんてどだい無理な話でしょう。器を作って置いて、これにぴったり収めようとするより、ぴったり収まるものを探す方が得策だと思いました。
また、上記の方針を明確に持続するには、どうしても指揮者氏とコンマスの私が良く相談せねばなりません。私たちは、会社帰りに定期的に落ち合い、酒を酌み交わしながら相談し合いました。私の方からは先ず「指揮者としてどんな音が欲しいのか言って欲しい。」と持ちかけ、それをベースにお互い意見を出し合い、ボウイングを考えると言うことになりました。
この語らいは、実は非常に楽しいものでした。お互い勉強にもなったし、高め合っているという実感も得られました。
そして、合奏前には指揮者氏が作った音階練習譜で、ユニゾンの響きをじっくり合わせることになりました。
しかし私はこれだけではまだまだ不充分と思っていました。もっとなにか効果的な方法はないかと思っていました。合奏が楽しくなるには、みんなが一緒に上手くならなければならない、そのためにどんなことをすればいいのか・・・。今のこの条件で出来る最善は何か・・・。
ちょうどこの頃は、自分自身の技量も完全に頭打ちになっていて伸び悩み状態で、何もかも全体的にスランプ状態でした。
この頃でした、イヴァン・ガラミアン教授の本「バイオリン奏法と指導の原理」に出会ったのは。
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