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<弦楽合奏の楽しみ>
(5) 「バイオリン奏法と指導の原理」

イヴァン・ガラミアン教授の本「バイオリン奏法と指導の原理」との出会いは、その内容は言うに及ばず、タイミングと云い正に運命的でした。この本は、私がかねてより持っていた疑問に完璧に答えてくれたのです。その頃の私は、独学の時代に入ってもう既に数年が経過しており、自分の考えてきたことが本当に正しいのかどうか、教えてくれる方がいなかったのです。何より、バイオリンの下手な人間が何を言っても、上手い人からそれは違うと言われればそれまでで、自信を持って人に言うことが出来ず躊躇することが多かったのです。この本にはそのおぼろげな私の考えを、具体的に明確に、そして理論的に支えてくれただけでなく、実に様々なことを教えてくれました。

この本を詳細に説明したいところですが、それは本編の趣旨ではないので他の機会に譲るとし、今回はこの本の至る所に私が引いた赤下線の中から、特に!!のマークのある箇所のごく一部をご紹介したいと思います。

「私が賛成しかねるまず第一は、あらゆる演奏者やまた、ヴァイオリン演奏に関するいっさいの事柄を、かたくなな規則に従わせようという現代の主張である。(後略)」

「優秀な演奏家とは何かと問うならば、雄弁家の特質は何かを考えればよい。(中略)雄弁家とはまず、良い声を持ち、正しい発音、巧みな弁舌、語るべき内容を持ち、しかもそれを誰にも分かるように堂々と行う。同様に、優れた音楽の演奏者は熟練したテクニックと、誰にも理解でき、信頼できるような解釈との結びついた演奏をする者である。」

「ポジション変更の場合、練習の過程は、手が楽器のネックの新しい位置を見いだすこと、通過距離をとらえる案内指の感覚、および位置変更の進行を耳できくことによって指に正しい位置感覚を与えることの三者の結合と言って良いであろう。この練習をおし進めていくと、最後には頭の中で楽曲を準備し、望む高さの音を心に浮かべるだけで、指が正確に弦上の定位置を自然に打つところまで行くのである。」

「シフトには完全シフトとハーフシフトとでも云うべき二種がある。完全シフトとは、手と指の両方が、新しいポジションに動くことを云う。ハーフシフトでは、親指がヴァイオリンのネックの所での接触の場所は変わらない。親指は固定して動かさず、ただ曲げたりのばしたりして他のポジションに移れるようにする。つまり、親指はそのままにしておいて手のシフトが終わってから、親指を新しいポジションに置きかえらせるのである。」

「クリーピングフィンガリングでは、のばしたり、ひっぱったりして押さえた指がそこに移り、新しいポジションの手の体制やフレームを作るための基点になっている。手は指の動きにつれて、新しいポジションに移動していくのであり、それはあたかも毛虫が這う様子に似ている。」

「弓を返す直前に弓速を落とし、圧力を減ずること、この二つの操作がデリケートに、しかも正しく精密に調整されて行わなければならない。」

「規則的な毎日の練習は、不規則で、断続的な間をおいた長時間の集中練習よりも生徒をはるかに進歩させるであろう。」

等々ですが、特に私にとって衝撃だったのは、ハーフシフトやクリーピングフィンガリングの存在でした。この件は、少し長くなりすぎますので次回に譲りましょう。

尚、上記の引用文は、出来るだけ原文に忠実にしましたが、あまりにも長くなってしまいますので、ごく一部略したり、別の言葉に変更した箇所があることをご容赦下さい。