TOP
大阪オフ会
   
エッセイ
MIDI
   
関西音楽情報
   
リンク
   
更新履歴
   
   

<弦楽合奏の楽しみ>
(7) 美しいトリル

私が合奏団のみんなに言いたかったことといっても、極めて常識的なことです。私がガラミアン教授の本に感じた事柄も、子供の頃からやってきた方にとっては、当然過ぎることでしょう。何を当たり前のことを、わざわざ取り上げて大げさに吹聴してるの?って言われそうです。

大人になってから始めたからこそ感じることというのがあると思うのです。

私が合奏団のみんなに言いたかったことというのも、極々常識的なことでした。しかしわざわざ取り立てて言わないことには、合奏団全体としてなかなか向上して行かないと思いました。このこと、みなさんにもご紹介しましょう。

ポジション移行はシフトとも呼ばれますが、これはバイオリンを大人から始めた人達が、必ず一度は乗り越えなければならない山の一つです。では何故必要なのでしょうか。先ずバイオリン特有の高音を弾くときに必要ですね。実はそれだけではないのです。

弦を押さえる指は限られていますね。この限られた指達の内、楽曲のある音符に対してどの指を使うかということが問題なんです。

1st.posi.しか弾けない人にとっては 選択の余地はありません。ある音符を弾くのに、弾く弦も使用する指も弾く前から自ずから決まってしまいます。その結果、非常に難しい弦の移行、ぎこちない指使いやボウイングを強いられてしまいます。もうこの件一つとっても、子供の頃からやっている人達とは雲泥の差です。

特にトリル!

子供の頃からやっている人に、特に感じるのはトリルが美しいと言うことです。特に小指を使用せねばならないようなトリルでも、彼らは上手く弾くのを見るに付け、あぁやはり子供の頃から訓練していないとだめなんだ、と思いがちです。しかし、なんのことはない、彼らは小指を使用していないんです。彼らの中にもやはり小指のトリルを苦手としている人もいるのです。だから、そこは自分にとってやりやすい指でトリルが出来るようにシフトしているのです。

あるいは、ある早いパッセージで、2弦にまたがって音が出て来、むずかしいすばやい弦の移行を続けて何度もやらねばならないような場合、モタモタする事が多いですね。これも子供の頃からやっている人達は難なく弾いています。これも、やはり子供の頃から訓練していないと・・・と思いがちです。しかし、何のことはない、彼らは弦の移行をしていないんです。弦の移行をせずに済むフィンガリングになるよう、シフトしているだけなんです。

このように、シフトすることは、高音を弾くという意味合いの他に、自分にとって弾きやすい指や弦の起用を可能にするという実に重大な役割もあるのです。ですから、初めて弾く曲なんかで、最初にすることは、どんなフィンガリングで弾くのが弾きやすいかという研究から入ります。この意味で頻繁に使用するのが、1〜4ポジションなのです。

私たちは、ややもすると奇数のポジション、特に3rd.posi.に頼りがちです。これでは、1st.posi.しか弾けない人と余り変わりません。偶数ポジション、特に2nd.posi.が使えるようにするべきです。この2nd.posi.が使えるようになったとき、今まで難しいと感じていたパッセージがぐっと弾き易くなることでしょう。

つまり、起用する指の選択肢を多くするべきなんです。使用する指が4本ですから、1〜4posi.が使えるようにしたいものです。私は、第5Posi.を練習するぐらいなら、第2や第4を練習することをお奨めしたいぐらいです。

以上のことは、大人から始めた方が、とにかく曲が弾けるようになりたい、と切望している方を対象にお話ししています。実は、有効なシフトの使用は、弾き易さの追求という方面から論じるのではなく、音楽的な弾き方の面から論じるべきなのでしょう。しかし、我々には弾き易さという面から入る方が遥かに説得力があり、合奏団のみんなに「なるほど、俺ももっと練習しよう。」と思ってもらうのにはこの方がより効果的と思ったのです。

そして、弾き易さは「音を正確に捕らえる」ことにつながると信じ、これが音程やリズムを良くする結果を生むと信じ、合奏団のみなさんに小冊子を作成して説得したのでした。