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前回は、「我が人生最大の興奮(上)」で弾くことを諦めていた曲が、いきなり弾けるようになったことをお話ししました。今回は前回に言ったように、何故こんな事が起こったのかを蛇足ながら、私の考えたことを書いてみます。あの練習方法のポイントは、結局曲全体を、弾けるところも難所も全てひっくるめて初めから終りまで全て同じゆっくりしたテン
ポで弾くところにあります。このゆったりしたテンポというのは、その曲一番の難所が、少 しの迷いもなく弾けるテンポでということです。このテンポで少しの迷いもなく弾けるようになったら、テンポを全体的に少しだけ上げてみて、このテンポでも迷い無く弾けるように
なったら、また少し上げるという方法です。こうして自分の限界いっぱいまでテンポを上げていくのです。いいですか部分的にではなく、全体をですよ。何故この方法が効果あるので
しょう。通常、我々は曲の難所があると、そこだけゆっくり練習します。そしてインテンポでもそこそこ弾けるようになったら、曲の最初から弾いてみますね。その場合、曲の最初
から通して弾くと、弾けなくなってる場合が多いって事ありませんか?私の場合そうなんです。ですから、いくら部分的に取り出したときに弾けても意味無いんですね。これが難所も
含めて全体をゆっくり練習することで改善できるとは思っても見なかったんです。しかしこれ、やさしい箇所もゆっくり弾くと言うことになりますので、これはかなりな苦痛を伴います。パソコンのピアノ伴奏がなければ、恐らくやさしい箇所はインテンポで弾きたくなるでしょうね。そして難所だけゆっくりと弾く。このやり方でいつも失敗してきました。全体を
ゆっくり弾き、迷うことなくスムーズに弾けるようになってからテンポを上げる。この方法 はパソコンのピアノ伴奏があって初めて可能 - - -
と言ってしまうと過言かも知れませんが、伴奏があるので、仕方なくそのテンポでやさしい箇所も弾くことが出来るんだ、とは言えると思います。たまたま試してみたことが、意外な効果が発見できたんですが、一体これ
は何故なんでしょう?
話はがらっと変わるようですが、私は常々スポーツ界の記録に不思議なものを感じていたんです。それは特に陸上100m短距離の記録です。この記録はずいぶん長い間、10.00秒が世界記録で、これは人間の限界とまで言われてきました。それが何十年ぶりかでカール・ルイスが9.98秒と初めて10秒の壁を破ってからはどうでしょう。それからというものは、次々と10秒の壁を破る記録が出だしたんですね。もう今や10秒の壁を破るのは珍しくなくなってきてますね。薬物事件で非公認とはなってますがベン・ジョンソンの9.79秒という驚異的な記録まで飛び出すという有様です。最近の例でも、一昨年米大リーグでベーブ・ルースの年間60本のホームラン記録をこれも50年ぶり位かで破られましたね。それもマクガイヤとソーサの二人に。かと思うと、昨年もこの二人はもう難なく60本を越えて居るんですね。これ、私は不思議でならなかったんです。確かに近代的なトレーニングがそんな大記録を生んでいると思いますが、私にはどうもメンタルな
ことも影響しているように思えます。「それが全くの不可能という訳ではないんだ。」という意識。「珍しいことではないんだ」という意識が大きく影響していると思うんです。これ、難曲を弾くときの我々の意識にもあるのではないかと思えるのです。部分的には弾けるようになっても、曲の初めから弾いて弾けるのは体験したことがない。弾き進んでいく内、難所が近
づいてきた、と言う意識が精神的に目に見えない形でプレッシャーとなって作用しているはずです。そしてそのまま難所に突入する。もうそのときには、部分的に練習して弾けるようにな
る前の意識に戻っているのかも知れません。かくして撃沈。それが、曲の初めから弾けるよ うにしておき、それはもう珍しいことではないんだという状態にしておくことによって、自分
は弾けるんだという意識が根付き、難所に対する精神的プレッシャーが軽減出来て来るんではないかと思うのです。出来るんだという自己暗示が必要だと言う事なんでしょうか。
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